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地球防衛システム

· 約7分
Yachiko Obara
共同代表 @ ポリマスリサーチ
Hiroki Obara
共同代表 @ ポリマスリサーチ

夏になり熱波が当たり前のようになってきた。高気温では野生生物も多く死ぬ。適応可能な気候ではなくなり、多くの動植物が絶滅への道を進んでいる。

地球の沸騰を止めるには教育システムを変える必要がある

それは、ヒトも例外ではない。毎年のように最高気温は記録更新し、異常気象で熱波、大雨、竜巻など自然の猛威に悩まされている。自然相手の一次産業が立ち行かなくなり、土に触れない消費者たちも経済的にダメージを受けることでそれに気づき始めている。

こんなにも地球環境が変化しているのに、何も変えようとせず、私たち人類は対症療法で済まそうとしている。明らかに問題解決能力が足りていない。問題解決能力は教育環境と日々の生活習慣によって養われるが、両方を早急かつ根本的に改善しなければ、地球規模の問題解決はこれからも失敗が続くだろう。

地球規模の問題を扱うには地球物理学研究が必須

地球の温室効果を理解するには、地球物理学を研究する必要がある。地球は温室効果ガスの存在によって生命が存続可能な環境が保たれていると考えられているが、地磁気シールドなど目に見えないバリアは何重にも張られていて、そのおかげで生態系の恒常性が保たれている。例えば、太陽から来る太陽風や宇宙線は目に見えないが、ヴァン・アレン帯1がなければ、地球環境は電子レンジの中で暮らすように生物が生存するには厳しい環境になってしまう。

西洋文明では、二酸化炭素やメタンを直接的に除去するための除去技術などで気候変動ビジネスが隆盛を奮いつつあるが、特定のガスを除去できたとしても、それで万事解決とはならない。それは、いつも科学が行っているように、根治ではなく対症療法である。対症療法は問題Aを解決するときに、新しい問題Bを生み出す。例えば、温室効果ガスを除去しすぎると、今度は冷えすぎて全球凍結に向かう。

「冷えすぎたらそのときまた考えればいい」という問題の先送りは問題を別の問題に移し替えているにすぎない。地下から化石燃料を掘り尽くしてしまえば、薄くなった温室効果ガスを濃くするのは、濃くなりすぎた温室効果ガスを薄めるのと同じくらい難しくなる。地球は熱すぎても冷えすぎても多くの生物が住めない星になる。

こどもたちのピュアな思考で地球温暖化を解決する

『ゴルディロックスと3びきのくま』のテーブルの上のスープのように、熱すぎても冷たすぎてもだめ。ちょうどいい温度にするにはどうすればいいのか。

カルピスの場合、薄いときは原液を足せばちょうどよくなる。濃いときは水を足して薄めればいい。これと同じことを地球の大気に対しても行えばいい。だってカルピスが濃いからといって、混ざってしまったカルピスだけを取り除くなんて無理だし、できたとしても大変すぎる! カルピスで物事を考えるこどもたちなら、このように考えるだろう。

カルピスを薄めるように温室効果ガスを薄める

じゃあ地球の大気組成はどうなっているのか? 温室効果があるガスが多すぎるなら、温室効果のないガスを増やせばいい。温室効果のないガスで増やせそうなものはあるか? 酸素はどうだろう? 酸素が増えて困ることはあるだろうか?

窒素は約78%、酸素は約20.95%、アルゴンは約0.93%、二酸化炭素は約0.0415%2で、このうち、窒素は非常に安定した分子で化学反応が起きにくく濃度はほぼ一定。大気中、土壌、水中を常に循環している。

アルゴンは不活性ガスで化学的に反応しないから濃度安定。地球内部からの放射性崩壊によって生成され、大気中に放出されるが、生成と放出のバランスは釣り合いが取れていて濃度はほぼ一定。

酸素は葉緑体を持つ生物が光合成によって供給する。葉緑体を持つ植物や菌類の数が増えれば、単純に酸素は増えることになる。例えば、植物がない場所に植物を増やせばいい。候補としては、砂漠か氷上か海面か人工物の表面など。このうち植物が昔生えてたのは、砂漠。そうすれば酸素が増えて大気の温室効果は少し弱まるはず。そもそも地球上で酸素を増やす方法は、植物の光合成以外にない。光合成には二酸化炭素も使われて一石二鳥! カルピスで物事を考えるこどもたちの論理は単純明快で猫でも納得できる。

地球の歴史をなぞるように砂漠を植物で埋め尽くす

しかし、砂漠を植物で埋め尽くすにはどうしたらいい? 水がなく土壌もない場所に植物を持っていってもすぐに枯れてしまうのでは? でも、よーく観察すると、砂漠地帯にも虫はいるし、動物もいるし、サボテンは立ってる。泉が湧いたオアシスもある。オアシスの周りにたくさんの植物を植えて、オアシスを広げていけばいいんじゃないの? そしたらもっといろんな虫や鳥が飛んできて、草食動物も来て、それを食べる肉食動物も来る。死んだ植物や動物を分解する微生物も来る。分解物の腐植から土ができる。

そうして循環ができあがって、植物は芽を出し、茎を伸ばし、花を咲かせ、種を飛ばす。そうやって放っておいてもどんどん植物は広がっていくはず。人間が余計なことをしなければ、このサイクルで砂漠は緑化していく。砂漠が緑化できるなら、荒れ地も乾燥した山岳地帯もできる。食糧にしないなら鉱山跡地でもできる。太古の地球ではこうして海から陸、低いところから高いところまで生物の生息地が広がっていった。

植物が開拓し、動物が住む。微生物が裏で糸を引く。これまでもそうやって地球を維持してきたし、これからもそうしていくべき。微生物の力で生まれた素敵な飲み物カルピスが好きなこどもたちならそう考える。

大事なものは目に見えない

化石燃料の燃焼や森林伐採、土壌の耕作で増える二酸化炭素は目に見えない。だから問題解決が難しい。色がついて色の濃さが目に見えていたら何とかしようと思うはず。

酸素だって目に見えない。伏流水も地下水も目に見えない。地下の微生物世界、菌糸ネットワークも目に見えない。目に見えないものたちの存在と働きによって生かされているということに気がつけるかどうかは、もはや宗教のストーリーではなく科学の理論で説明がつくことであり、宇宙や地球に対する教養レベルを上げることで自然ともたらされる能力といえる。

新しい生育システムは地球を守るための仕組み

発達理論によれば、6歳からはそれまでに鍛えられた五感を外の世界の探索と問題解決に使う知的探求の旅に出る。既存教育は五感を使わせない。移動能力も思考能力も使わせない。その代わりに、ヒトの誤った常識や自然に対する偏見を植え付ける。

そのような無意識に植え付けられる先入観は地球規模の問題解決の邪魔になる。自然のありのままの姿を五感で捉え、第六感を使って宇宙が知的生命体に望む超自然的な仕事をする。それによって地球の経営が可能になる。地球を守るための仕組みとしての新しい生育システムがそれを可能にする。新しい生育システムは地球防衛システムでもある。


Footnotes

  1. ヴァン・アレン帯とは、地球の磁場にとらえられた、陽子(陽子線)、電子(ベータ線)からなる放射線帯。太陽風や宇宙線からの粒子が地球の磁場に捕らわれて形成されると考えられている。

  2. 現在の地球の大気組成。