メインコンテンツまでスキップ

音楽という表現方法

· 約6分
Yachiko Obara
共同代表 @ ポリマスリサーチ
Hiroki Obara
共同代表 @ ポリマスリサーチ

私たちの発達理論を音楽として表現する活動を始めました。ポリマスリサーチで扱っている話はどれも物理法則レベルのシンプルなものが多いですが、世の中で培われた常識に反しているためか、なかなか真意が伝わりづらいと感じています。そこで、より多くの人たちに「耳を傾けてもらう」方法として「音楽」を使ってみる実験を始めてみました。

三百年後の世界から玉手箱のような音楽をお届け

URASHIMA TURTLE」という名前で音楽活動を始めました。私たちと私たちの娘たち(現在6歳&2歳)がすべて作詞作曲していて、作曲は現在最先端の技術1を駆使しています。

第一作目のアルバム『SHYとY』はApple MusicやSpotify、YouTube Musicなどで配信中ですので、ご興味があれば、一度聴いてみてください。

日常の生活感やオルタナティヴな考え方をファミリーモブ的に表現する

解釈したいように解釈されてしまったり、つまみ食い的に部分解釈されてしまったり。私たちの考えを一物全体として捉えてそのまま染み込んでいくように吸収してもらうにはどうすればよいものか、日々思案していました。

いつものように、こどもたちと新しい技術で遊んでいるうちに、表現媒体としての音楽の可能性を発見しました。あくまでも素人である私たちにとっては、この音楽活動は「遊び」や「自由研究」の一環としての実験的アウトプットに過ぎないですが、音楽の浸透力を鑑みれば、誰かの心に訴えかけ行動を変容させるポテンシャルを秘めているポリマシックな芸術活動と捉えることもできるのではないかと密かに思っています。

日常で感じる喜びや違和感、既存の流通している考え方とは異なる考え方など、表現の素になることは意外と多くあります。それは明らかに、子育てから得られる感情がベースになっていますし、こどもたちと何かを一緒にすることで得られる発見や洞察の数々は大人にとっては染み付いた先入観を洗い流す良い機会になっています。

キャンプやショッピングに行くように、家族単位で「ファミリーモブ的」に何かを作ることが当たり前になれば、本当の意味で「楽しい日本」になるかもしれません。そしてその先には、こどもをどこかに預けて大人はただ色のない働き方に邁進するという「当たり前」を超越する生育システムの進化の道筋が見えてくるのではないかと、これまた密かに思っています。

農民芸術概論綱要の実践

今こそ、我らが心の師、宮沢賢治先生の『農民芸術概論綱要』の実践をしていきたいものです。

われらはいっしょにこれから何を論ずるか

おれたちはみな農民である ずゐぶん忙がしく仕事もつらい
もっと明るく生き生きと生活をする道を見付けたい
われらの古い師父たちの中にはさういふ人も応々あった
近代科学の実証と求道者たちの実験とわれらの直観の一致に於て論じたい
世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない
自我の意識は個人から集団社会宇宙と次第に進化する
この方向は古い聖者の踏みまた教へた道ではないか
新たな時代は世界が一の意識になり生物となる方向にある
正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである
われらは世界のまことの幸福を索ねよう 求道すでに道である

何故われらの芸術がいま起らねばならないか

曾つてわれらの師父たちは乏しいながら可成楽しく生きてゐた
そこには芸術も宗教もあった
いまわれらにはただ労働が 生存があるばかりである
宗教は疲れて近代科学に置換され然も科学は冷く暗い
芸術はいまわれらを離れ然もわびしく堕落した
いま宗教家芸術家とは真善若くは美を独占し販るものである
われらに購ふべき力もなく 又さるものを必要とせぬ
いまやわれらは新たに正しき道を行き われらの美をば創らねばならぬ
芸術をもてあの灰色の労働を燃せ
ここにはわれら不断の潔く楽しい創造がある
都人よ 来ってわれらに交れ 世界よ 他意なきわれらを容れよ

何がわれらの芸術の心臓をなすものであるか

もとより農民芸術も美を本質とするであらう
われらは新たな美を創る 美学は絶えず移動する
「美」の語さへ滅するまでに それは果なく拡がるであらう
岐路と邪路とをわれらは警めねばならぬ
農民芸術とは宇宙感情の 地 人 個性と通ずる具体的なる表現である
そは直観と情緒との内経験を素材としたる無意識或は有意の創造である
そは常に実生活を肯定しこれを一層深化し高くせんとする
そは人生と自然とを不断の芸術写真とし尽くることなき詩歌とし
巨大な演劇舞踊として観照享受することを教へる
そは人々の精神を交通せしめ その感情を社会化し遂に一切を究竟地にまで導かんとする
かくてわれらの芸術は新興文化の基礎である

どんな工合にそれが分類され得るか

声に曲調節奏あれば声楽をなし 音が然れば器楽をなす
語まことの表現あれば散文をなし 節奏あれば詩歌となる
行動まことの表情あれば演劇をなし 節奏あれば舞踊となる
光象写機に表現すれば静と動との 芸術写真をつくる
光象手描を成ずれば絵画を作り 塑材によれば彫刻となる
複合により劇と歌劇と 有声活動写真をつくる
準志は多く香味と触を伴へり
声語準志に基けば 演説 論文 教説をなす
光象生活準志によりて 建築及衣服をなす
光象各異の準志によりて 諸多の工芸美術をつくる
光象生産準志に合し 園芸営林土地設計を産む
香味光触生活準志に表現あれば 料理と生産とを生ず
行動準志と結合すれば 労働競技体操となる

大人もこどももフラットに

私たちが目指す理想の生育環境は、大人もこどももフラットに、このような生きたセッションを繰り広げられる環境です。 私たちが常に声を大にして言いたいのは、そういうことです。

なので、現在考えているオルタナティヴスクールのイメージは「学校」ではなく「研究所」に近いものになっています。詩人が日常生活を通して宇宙理解を進めていくような研究所、「永久の未完成これ完成である」が許される場、そのような宇宙的な小さな場の実現に全精力を注いでいます。

われらに要るものは銀河を包む透明な意志 巨きな力と熱である


Footnotes

  1. いわゆるAI作曲。AIにすべておまかせというわけではなく、楽器を演奏して編曲する代わりに細かくパラメータなどを調整して曲を作っていくスタイル。